ABOUT ATOPY

アトピーについて学ぶ

監修:羽白 誠 (はしろ まこと)先生

はしろクリニック 院長

Q. アトピーとは、どんな病気でしょうか?

A.アトピーは、湿疹とかゆみが特徴の病気です。

アトピー(アトピー性皮膚炎)とは、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみや湿疹を伴う病気。慢性皮膚疾患の代表的なもののひとつで、皮膚の乾燥を伴うことが多いと言われています。


 アトピーの患者は非常に多く、世界的にみると、子どもでは約15〜20%、大人は1〜3%の方がアトピーに悩んでいます。先進国のアトピー発症率は、新興国の2〜3倍になるといわれています*。


湿疹が出やすい部位は赤ちゃん、子ども、大人でそれぞれ異なります。アトピーの患者は、年齢が上がるにつれて減る傾向にあります。なかには、赤ちゃんや子どものときにアトピーを発症したものの、成長するにつれて症状が落ち着いてきて、そのまま治ってしまうこともあります。ですが、大人になってからも、症状が良くなっては悪くなるのを繰り返している方や、子どものときはアトピーと無縁だったにもかかわらず、大人になってから発症する方もいらっしゃいます。成人のアトピー性皮膚炎を「成人型アトピー性皮膚炎」として区別することもあります。

発症するタイミングによって、それぞれの患者さんがアトピーと付き合う時間の長さが決まってくることになります。一人ひとり、仕事や生活の時間の使い方、周囲との接し方、周囲からの影響の受け方が異なりますが、このウェブサイトでは

  • アトピーとの向き合い方

  • 保湿をはじめとしたスキンケア

  • 肌のことを考えた食生活や、衣類の選び方、家庭環境の整え方といった身近な問題について、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。

Q. どんな人が、どうしてアトピーになるのでしょうか?

A.遺伝要因と環境要因によって、肌(皮膚)のバリア機能が弱められることで起こります。

アトピーを発症するきっかけについては、実はまだはっきりとわかっていないことも多くあります。

ただ、アトピーを発症するきっかけには「遺伝要因」と「環境要因」がそれぞれあることがわかってきました。つまり、そもそも遺伝的に持っていたアトピーのなりやすさ(アトピー素因)に、年齢や生活環境などさまざま要因が重なり合うことで、アトピーを発症するという意味です。


  では、遺伝的要因としてよく語られる「アトピー素因」とは具体的にどのようなものかというと、

  • これまでに、あなた自身がアレルギーと診断されたことがある

  • あなたのご家族(親やきょうだい)が、アトピー、またその他のアレルギーと診断されたことがある

  • アレルゲンに対して反応する抗体(IgE抗体)を作りやすい体質

などが考えられて今います。
アレルギーとは、私たちの体にとって異物となる存在(アレルゲン)が入ってきたときに、もともと体に備わっている免疫機能が反応して異物を排除しようとはたらく物質(抗体)がたくさん作られることにより起こる不具合のことを指します。

しかし、こうしたアトピー素因を持っている方が必ずアトピー性皮膚炎になるというわけではありません。また、これらのアトピー素因がない方でも、アトピー性皮膚炎になることがあることが知られています。

また、アトピーを引き起こす環境的な要因としては、

  • 黄色ブドウ球菌

  • ハウスダストやダニやカビなど

  • ペットの毛

  • 食事バランスの乱れ

  • 夜型生活や睡眠時間の減少など生活習慣の乱れ

  • ストレス

などが知られています。これらはアトピーを悪化させる要因でもありますので、できるだけ排除できるよう日頃の生活においても心がけましょう。


これらの要因がアトピーを引き起すのには、アトピーの肌の状態も関係しています。

健康な肌の表面は皮脂膜で覆われていて、「バリア機能」が保たれた状態です。そのため、空気中、食品などに含まれるさまざまな刺激は、私たちの体の中に簡単には入ってこない仕組みになっています。一方、アトピーの方の肌(皮膚)はバリアが低下した状態にあって、上に書かれたようなアトピーを起こす要因が通過してしまい、皮膚の中で過剰な反応が起こることで、アトピーの症状につながると考えられています。

Q. アトピーの症状はどういったものでしょうか?

A.湿疹、かゆみなどのアレルギー症状、肌の乾燥が主な症状です。

アトピーの主な症状は、湿疹とかゆみ。そして、多くの患者さんの肌が乾燥傾向にあることです。それらの症状がどのようなものか、改めてここで説明します。

湿疹とは、皮膚表面に生じた炎症の総称です。赤みを伴うもの(紅斑)、表面が小さく盛り上がっているもの(丘疹)、皮膚の下に水分が溜まって小さい水ぶくれができた状態でかくと中の液体が出てくるもの(水疱)などがあります。

かゆみはアトピー患者さんが最も苦しめられる症状でもあります。かゆい部分をかいたら気持ちよくてかきむしった経験がある方もいらっしゃるかもしれません。かゆみは、布団に入るなどして肌が温まっているとき、リラックスしているとき、お仕事や勉強などで強いストレスを感じているときに起こりがちです。また、アトピーは季節性があるといわれていることから、夏にかゆくなる方と冬にかゆくなる方がそれぞれいらっしゃいます。

そして、アトピー患者さんについては、全年齢にわたって肌が乾燥傾向(乾燥皮膚,乾皮症,ドライスキン,アトピックスキン)であることが多いと言われています。この特徴は皮膚に炎症がないときには分かりにくいのですが,皮膚炎のあるときには顕著になります。肌がかさかさになったり、顔や体全体の肌がつっぱる感じがあります。皮膚組織はきめが粗くて赤みがあり、水分や脂質が不足した状態です。

ひとことでアトピーといっても、症状の出方と見た目などのバリエーションが非常に多く、どのようなことで困っているのかは患者さんによって大きく異なってくる病気だといえるでしょう。


アトピーと心との関係

アトピーというと見た目の症状に目がいきがちですが、アトピー患者と「心の状態」の関係もとても大切です。     

アトピーは、ストレスと関連が深い病気です。ストレスがかかることでアトピーの症状が悪化することがあります。大人でも小児でも心理的なストレスによって自律神経や免疫系統の働きが乱れることで、症状が悪化することがわかっています。

アトピーであることがストレスになって、結果として身体的な症状と一緒に精神的なつらさまで抱え込んでしまうことがあります。アトピーの症状をつらく感じたり、お肌の状態が気になって容姿への自信がなくなるとか、病気がいつまで続くのか、今の薬を続けても大丈夫なのかなどの不安がストレスとなり、うつ病や不安障害といったメンタルの不調を招いたりすることもあります。ひどくなると、学校やお仕事に行けなくなるケースも少なくはありません。

Q. アトピーとはどうやって付き合えばいいのですか?

A.お医者さんによる治療と、家でのセルフケア&家族のサポートがあります

アトピーと付き合っていくにあたっては、お医者さんによる治療と、お肌を清潔に保ってバリア機能を補う家でのスキンケア、そして同居する家族のサポートのすべてが重要となります。

病院では、お医者さんが湿疹の様子をよく見て、必要に応じてアレルギーの原因を突き止めるための検査(パッチテストやプリックテストなど)を行います。そして、患者さんのふだんの生活の様子を聞きながら、どうやってアトピーに対処していくかを決めていきます。アトピーの治療では、薬物療法を含むことが多いです。アトピーは長期的に治療を続ける必要のあるため、患者さんのお肌の状態に合った適切な治療とケアを続けることが大切であり、それによって症状をコントロールすることも可能になります。アトピー性皮膚炎の治療でよく使われる副腎皮質ステロイド外用薬を気になさる方がいらっしゃいますが、このお薬を使うことによって、うまく症状をコントロールできるようになります。お薬に対する不安があるときは、担当医に質問をするなどをして、薬の必要性についても理解するようにするのがよいでしょう。


日本皮膚科学会や日本医師会では、アトピーの原因や治療方法を公開していますので、よろしければ参考になさってください。

日本皮膚科学会:https://www.dermatol.or.jp/qa/qa1/index.html 

日本医師会:https://www.med.or.jp/chishiki/atpy/001.html#Anchor-24586

お医者さんは、症状の改善に向けてあなたと一緒に歩んでいくパートナーとなり、あなたの気持ちとお肌の状態を理解し、症状を改善するための選択肢のなかからあなたに合った治療方法を一緒に考えてくれます。アトピーそのものや治療に関すること、不安や気になることがあったら相談することをお勧めします。

アトピーの症状を抑えるために、あなた自身にもできることがあります。それは、スキンケアです。スキンケアは、主に肌の「洗浄」と「保湿」から成り立ちます。アトピーの方のお肌はバリア機能が低下しているため、アレルゲンをはじめとしたさまざまな刺激に影響を受けやすい状態です。肌の表面をやさしく丁寧に洗って清潔な状態にしてから、肌にやさしい低刺激・高保湿の保湿剤を塗ることで、お肌のうるおいをおぎない、バリア機能をサポートしましょう。


また、アトピーのケアではご家族からのサポートも欠かせません。特に赤ちゃんや子どもは、自分で十分なスキンケアをすることができないですから、こまめに様子を見て、スキンケアをしましょう。


アトピーという病気に対する理解ももちろんですが、アトピーを引き起こす、あるいは悪化させるアレルゲンとの接触を極力減らすには、掃除や食事についてご家族の協力が必要です。ご家族の病気に対する理解や治療に対する理解が必要です。あなた自身、もしくはご家族がアトピーで悩んでいるなら、アトピーについて家族みんなで話し合ってできることを考えてみてください。

*Ann Nutr Metab 2015, Atopic Dermatitis: Global Epidemiology and Risk Factors, S. Nutten、Carmela Avena-Woods, Overview of Atopic Dermatitis,June 20, 2017, Atopic Dermatitis: Epidemiology and Pathogenesis Update, 2012

羽白 誠 (はしろ まこと)先生

はしろクリニック 院長

1986年に大阪大学医学部を卒業、1991年に同大学大学院博士課程修了により医学博士。2001年より国立大阪病院皮膚科部長、2004年より大阪警察病院皮膚科部長。また2008年から4年間は神戸女学院大学人間科学部非常勤講師兼任。2010年よりはしろクリニック院長に就任し、現在に至る。なお2005年より現在まで大阪大学大学院医学研究科招聘教員も兼任。学会資格などに日本皮膚科学会認定専門医、日本心身医学会心身医療科専門医・指導医、日本心療内科学会登録医などを持ち、日本皮膚科心身医学会理事長も務めている。